吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― ゼッテリア 編―

2025年9月23日

吾輩は猫である ― ゼッテリア 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

このあいだ町を歩いていたら、
見慣れぬ看板に出会った。
「ゼッテリア」とある。
どうやら新しい店らしい。
人間が列を作り、
揚げたての音と香ばしい匂いが漂っていた。

吾輩は鼻をひくひくさせた。
ハンバーガーにチキン、フライドポテト――
どれも猫の口には縁遠いが、
匂いだけで腹が鳴る。
人間たちは楽しげに袋を抱え、
「安い!」「うまい!」と声を弾ませる。

思えば、人間の食の流行は目まぐるしい。
タピオカに列をなしたかと思えば、
今はゼッテリアで歓声をあげている。
猫の食は変わらぬ。
朝も昼も夜も、カリカリと水と、ときどきおやつ。
だが変わらぬ日常こそ、案外ありがたいのかもしれぬ。

吾輩は店先でじっと佇み、
ポテトの香りに包まれながら、
人間たちの楽しげな顔を眺めた。
食は腹を満たすだけでなく、
心をも浮き立たせるものらしい。

吾輩は猫である。名はまだない。
それでも願わくば、
ゼッテリアの香りが人と猫を少しでも幸せにするなら、
悪くないと思うのだ。

新しき 匂いに揺れる 猫の腹


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gonta

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