吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― 元町チャーミングセールと猫 編―

2025年9月27日

吾輩は猫である ― 元町チャーミングセールと猫  編―

吾輩は猫である。名はまだない。

今日は元町の通りがひときわ賑やかだ。
「チャーミングセール」とやらで、
人間たちは大きな紙袋を抱え、
目を輝かせて店々を渡り歩いている。

赤や青の値札が風に揺れ、
「半額」「限定」の文字が並ぶ。
吾輩には数字の意味はわからぬが、
人間の尻尾――いや、歩みの速さを見るに、
相当お得らしい。

ブランドの店先で試着する人々、
カフェのテラスで戦利品を語る声。
その足元を、吾輩はすり抜ける。
時折、甘いワッフルの香りが漂い、
鼻先がぴくりと反応する。

考えてみれば、
猫にとっての「セール」とは、
魚屋の軒先に落ちた切れ端や、
夕方に投げてもらえる煮干しの余り。
人間も猫も、得を探す目は変わらぬらしい。

日が暮れるころ、通りは紙袋の山。
疲れた顔も、どこか満ち足りて見える。
吾輩は石畳に座り、
その光景をじっと見届けた。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが今日も確信した――
買い物とは腹を満たすだけでなく、心を踊らせるものだと。

値札より しっぽで測る 幸せよ


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gonta

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