吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ―猫 海に戻る 編―

2025年11月26日

吾輩は猫である ―猫 海に戻る 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

久しぶりに、潮の匂いが鼻に触れた。
遠くで波が砕け、
海鳥の声が空を横切っていく。
この場所は、吾輩が生まれた“海沿いの町”。
風は昔のことを全部覚えているようだ。

飼い主と暮らす都会の生活はにぎやかで、
窓から見える景色も常に変わる。
だが、心のどこかでいつも、
この波の音だけは特別な響きを持っていた。

砂浜に足を下ろすと、
ひんやりとした粒のひとつひとつが
まるで「おかえり」と言っているようだった。
潮風が毛並みをゆらし、
吾輩はゆっくりと目を閉じた。

かつて、ここで母猫と並んで見た夕日。
幼い吾輩が波を怖がり、
でも少しだけ興味を持って近づいたあの日。
それらの記憶が、
海の青さとともに胸の奥でほどけていく。

人も猫も、
帰るべき場所はただひとつではない。
今の家も、ここも、
どちらも吾輩にとって“世界の一部”なのだ。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、波打ち際に座りながら思った。
帰るとは、
過去と今をつなぐ、静かな祈りのようなものだと。

波音や ふるさと遠く 胸に満つ


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gonta

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