吾輩は猫である。名はまだない。
ある日から、鼻がむずむず、目がしょぼしょぼ。
くしゃみをすると、しっぽまで跳ねるほどの勢いだ。
毛づくろいをするたび、
なんだか肌がひりひりして落ち着かぬ。
飼い主が吾輩の様子に気づき、
「もしかしてアレルギーじゃない?」と眉を寄せた。
アレルギー――それは人間だけの悩みだと思っていた。
まさか猫の世界にもあるとは、驚きである。
動物病院で検査を受けると、
獣医殿はやさしい声で言った。
「少しだけ食物アレルギーがあるみたいですね。
フードを変えて、環境も整えていきましょう。」
飼い主は真剣な表情でメモを取り、
帰宅すると、その日からフードが変わった。
香りは控えめだが、
体はすこぶる軽くなる。
数日もすると、くしゃみも減り、
目のかゆみもおさまり始めた。
飼い主がほっと息をつく。
「良かった……。気づくのが遅れなくて」
吾輩は膝に乗り、喉を鳴らした。
――不調は怖いが、それ以上に
ともに向き合ってくれる存在が心強い。
アレルギーがあっても、
吾輩の日々は続く。
窓辺でひなたぼっこし、
夜は飼い主の横で小さく丸くなる。
吾輩は猫である。名はまだない。
だが今日あらためて思う。
「共に暮らす」とは、
弱さを見つけたときこそ絆が深まる、ということだ。
くしゃみ減り 胸にひらける 春の風