【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―ペット保険 編―

2025年12月15日

吾輩は猫である ―ペット保険 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

最近、飼い主が書類とスマホを行ったり来たりしながら、
「どうしようかな……」と何度もつぶやいている。
どうやら“ペット保険”という人間の制度を調べているらしい。

吾輩としては、
食べて寝て遊んで、
たまにひっかいて、
いつもの日々を生きるだけであるが、
飼い主はどうにも心配らしい。

先日、皮膚炎で病院へ行った吾輩を見て、
気づいたのだろう。
――命に値段はないけれど、
  守るための備えは必要だ、と。

飼い主は獣医殿に相談し、
「もしものとき、負担が軽くなるなら安心ですね」
と言われたらしい。
その顔には、どこか肩の力が抜けたような安堵がにじんでいた。

その夜、飼い主は吾輩を抱き上げて言った。
「保険に入るよ。
 長く一緒にいたいからね。」

吾輩はその胸に顔をうずめ、静かに喉を鳴らした。
保険という仕組みよりも、
その言葉こそ吾輩が求めていた“安心”である。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが思う。
備えとは、未来を恐れるためにするのではなく、
未来を“いまより大切にする”ためにあるのだと。

守られて ひざのぬくもり 春つなぐ


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gonta

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