【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―猫耳 編―

2025年12月19日

吾輩は猫である ―猫耳 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

人間界では最近、“猫耳”なるものが人気らしい。
ヘアバンドだったり、コスチュームだったり、
あるいはアニメの中で自由に動いたりする。

だが、吾輩から言わせれば――
猫耳とは、ただの飾りではない。
心の窓であり、気分のアンテナである。

興味があるときはピンと立ち、
安心しているときはゆるりと倒れ、
嫌な音がするときは左右に振れて知らせる。
猫耳とは、言語より雄弁な“意思表示の装置”なのだ。

先日、飼い主がキラキラの猫耳カチューシャをつけて、
「見て! 可愛いでしょ?」と言ってきた。
吾輩はじっと見つめた。

――ふむ。
悪くはない。
だが、動いていない。

吾輩は自分の耳をピッと立てて見せ、
次にぺたんと倒し、
最後に片耳だけくいっと動かした。

飼い主は驚いて言った。
「えっ、耳だけでそんな表情出せるの?」

吾輩は心の中で微笑んだ。
猫耳とは、
魅せるだけでなく、生きるための術なのである。

夜、飼い主が付けていたカチューシャが
窓辺に置かれていたので、
吾輩はそっと隣に座った。

動かぬ耳と、動く耳。
どちらも人を笑顔にする力があるのだと気づいた。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが今日、自分の耳を少し誇りたくなった。

耳ひとつ 気持ちを伝う 春の風


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gonta

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