【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―猫晴れ着 編―

2026年1月17日

吾輩は猫である ―猫晴れ着 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

正月の朝、
飼い主がいつもより丁寧に吾輩を呼んだ。
その手には、
見慣れぬ布切れがある。
赤と金、
小さな模様。
――どうやら晴れ着らしい。

吾輩は一瞬、身構えた。
服というものは、
基本的に自由を奪う。
だが、今回は違った。
軽く、柔らかく、
首元にそっと結ばれるだけ。

鏡の前に立たされる。
そこに映ったのは、
少し誇らしげな吾輩だった。
いつもの毛並みの上に、
“特別な日”が重なっている。

飼い主は満足そうに言った。
「似合うね。お正月だもん。」
吾輩は否定もしなかった。
晴れ着とは、
見せるためのものではなく、
気持ちを整えるためのものなのだろう。

来客があり、
「まあ、立派ねえ」と声が上がる。
吾輩は逃げず、
騒がず、
ただ静かに座っていた。
今日だけは、
少し改まった猫である。

昼を過ぎると、
晴れ着は外された。
自由な体に戻る。
だが、不思議と、
背筋の伸びた感覚は残っている。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが今日、
装いが心をつくることを知った。
一年の始まりに、
これはなかなか悪くない。

晴れ着脱ぎ 背中に残る 年の芯


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gonta

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