吾輩は猫である。名はまだない。
人間の世界では、
「力」がものを言う場面が多い。
声の大きさ、
数の多さ、
金の重さ、
肩書の硬さ。
それらが揃うと、
正しさより先に、
従わせる空気が生まれる。
吾輩はそれを、
高い棚の上からよく見ている。
力で押さえつけると、
一時は静かになる。
だが、
本当に静かなのは、
納得ではなく、
諦めだ。
猫の世界でも、
力は存在する。
大きな体、
鋭い牙。
だがそれだけでは、
群れは保てない。
無駄に威嚇する猫は、
やがて孤立する。
力を持ちながら、
使わぬ猫が、
一番長く場所を守る。
飼い主がニュースを見て、
ため息をついた。
「強いほうが勝つのは、
簡単だけどさ……」
吾輩は思う。
支配とは、
力で相手を動かすことではない。
相手が動かなくても、
そこに居られる余裕を持つことだ。
本当に強いものは、
従わせない。
選ばれる。
吾輩は猫である。名はまだない。
だが、
膝の上に乗るとき、
誰かに命じられたことはない。
それが、
答えなのだ。
力より 寄る理由こそ 強さなり