吾輩は猫である。
名前はまだない。
今日は、
少し様子が違う。
慣れぬ服、
慣れぬ鞄、
そして、
少し早い朝。
人間はこれを、
出張と呼ぶ。
遠くへ行き、
別の場所で働く。
移動もまた、
仕事の一部らしい。
スーツを着ると、
空気が変わる。
背筋が伸び、
歩き方まで、
少し固くなる。
吾輩は思う。
服とは、
気分を変える装置でもあると。
猫は、
毛皮を着替えぬ。
だが、
人間は装いで
役割を切り替える。
駅へ向かい、
人の流れに乗る。
新幹線、
会議室、
知らぬ街。
少し疲れる。
だが、
景色は変わる。
いつもの場所を離れると、
見えなかったものが見える。
それも、
出張の意味なのかもしれぬ。
帰る頃には、
スーツもしわになる。
緊張も少し抜け、
ようやく日常へ戻る。
吾輩は猫である。
名刺は持たぬ。
だが、
外へ出て得る刺激は知っている。
出張とは、
仕事をしながら、
少し世界を広げる旅なのだ。
スーツ着て
知らぬ景色へ
歩き出す