吾輩は猫である。名はまだない。
ある日、飼い主が分厚い本を開いていた。
図や文字が多く、
どうやら簡単な読み物ではないらしい。
「愛玩動物飼養管理士、勉強中なんだ。」
吾輩はその言葉を聞き、
少しだけ背筋を伸ばした。
“愛玩”とは、
可愛がること。
“管理”とは、
守ること。
なかなか責任の重い組み合わせである。
本には、
食事、病気、行動、法律。
かわいいだけでは済まされぬ事柄が、
静かに並んでいる。
吾輩は思う。
知るとは、
自由を増やすことではなく、
無知による傷を減らすことなのだ。
飼い主は言った。
「ちゃんと理解して、一緒に暮らしたいから。」
その言葉に、
吾輩は喉を鳴らした。
世話をする側が学ぶ姿は、
何よりの安心材料だ。
資格は、
首輪のようなものかもしれぬ。
縛るためではなく、
迷子にならぬための印。
責任を、
外に見える形にするためのもの。
吾輩は今日も、
ごはんを食べ、
眠り、
ときどき遊ぶ。
その平穏の裏に、
人の学びがあることを、
猫はよく知っている。
吾輩は猫である。名はまだない。
だがこの家で、
“知って守る”という姿勢があるなら、
安心して、
のびをしていられる。
学ぶ背に 命あずける 昼寝かな