【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―換毛期と空気 編―

2026年2月11日

吾輩は猫である ―換毛期と空気 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。

最近、
毛がよく抜ける。
床にも、椅子にも、
人間の黒い服にも、
季節が残る。

人はこれを、
換毛期と呼ぶ。

体は正直だ。
暑さでも寒さでもなく、
その“途中”に、
一番変化が出る。
皮膚がむずがゆく、
気分も少し落ち着かぬ。

そんな折、
部屋の空気が重くなる。
見えぬが、
確かに、澱む。

吾輩は知っている。
毛は体を守るが、
空気は体を左右する。
古い毛が抜ける時、
古い空気も、
出ていく必要がある。

窓が少し開き、
換気がなされ、
エアコンは控えめに回る。
風は直接当たらぬよう、
向きが変えられた。

それだけで、
体は違う。
毛づくろいの回数が減り、
寝息が深くなる。

換毛とは、
捨てることではない。
整えることだ。
次の季節に、
無理なく移るための準備である。

吾輩は猫である。
抜け毛は増えたが、
不調ではない。
空気が整えば、
体も応える。
季節とは、
静かな対話なのだ。

毛が替わり
風が変わって
春になる



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gonta

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