【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―もしもピアノが弾けたなら 編―

2026年2月12日

吾輩は猫である ―もしもピアノが弾けたなら 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。

吾輩は猫である。
名前はまだない。

夕方になると、
部屋の空気が少し変わる。
光が斜めになり、
音が減る。

人間は、
ピアノの前に座る。
弾く日もあれば、
鍵盤を眺めるだけの日もある。

吾輩は思う。
もしも、
ピアノが弾けたなら——
何を弾くだろうかと。

技巧はいらぬ。
拍手も求めぬ。
ただ、
その日の空気に合う音を、
一つずつ置いていくだけでよい。

強い音は出さない。
正確さにもこだわらない。
間違えたら、
そのまま次へ進む。

音楽とは、
整えることではなく、
受け入れることなのかもしれぬ。

鍵盤は白と黒に分かれているが、
響きは、その間に生まれる。
人の心も、
同じであろう。

やがて、
何も弾かれないまま、
夜になる。
それでも、
部屋は静かに満たされている。

吾輩は猫である。
ピアノは弾けぬ。
だが、
音のいらぬ時間を知っている。
それもまた、
一つの旋律である。

弾かぬ音
夜に残して
猫は寝る


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gonta

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