吾輩は猫である。名前はまだない。
夜が、
いつもより赤い。
提灯が連なり、
香りが混じり、
言葉が幾重にも重なる。
人間はこれを、
春節と呼ぶ。
新しい年が、
もう一度やってくるらしい。
暦が違えば、
始まりも違う。
それを不思議とは思わぬ。
猫にとって、
朝は毎日、新年である。
街はにぎわい、
火花が空を裂く。
音は大きく、
光は強い。
だが、
喜びとは、
外の明るさだけではない。
再会する者、
帰る者、
遠くから来る者。
荷物の中には、
土産よりも時間が詰まっている。
吾輩は、
通りの端で座る。
祝わぬが、
拒まぬ。
異なる始まりを、
そのまま受け入れる。
年が変わるたび、
人は願う。
豊かに、
健やかに、
穏やかにと。
願いは違えど、
求めるものは似ている。
やがて、
提灯は灯りを落とし、
通りは元の色に戻る。
残るのは、
少し温かい空気だ。
吾輩は猫である。
暦は持たぬ。
だが、
新しい気配はわかる。
春節とは、
違いの中に、
同じ願いを見つける日である。
赤灯り
異なる暦も
春は春