吾輩は猫である。
名前はまだない。
草の匂いがする場所で、
妙に落ち着いた者と、
妙に勢いのある者に出会った。
人間は、
前者をアルパカ、
後者を山羊と呼ぶ。
アルパカは、
風に逆らわぬ。
目は半分閉じ、
急ぐ理由を持たぬ顔で立っている。
山羊は、
急に跳ぶ。
低い柵など無意味にし、
時に、思考まで飛び越える。
色々、飛ばしてくる。
草も、
石も、
ときには話題も。
脈絡を越え、
突然、別の丘に立っている。
吾輩は思う。
飛ぶ者は強く見えるが、
残る者もまた強い。
アルパカは、
動かぬことで均衡を保つ。
山羊は、
動くことで均衡を探す。
どちらも、
間違いではない。
人間の世界にも、
話を飛ばす者と、
話を受け止める者がいる。
議論は山羊のように跳ね、
会議はアルパカのように止まる。
吾輩は、
少し高い場所に座る。
飛んできたものは避け、
残ったものだけを見る。
すべてを追わぬ。
すべてを否定せぬ。
選び、
残し、
静かに整える。
吾輩は猫である。
飛ばされぬ。
だが、
飛ばす者も嫌いではない。
混ざり合うからこそ、
風景は単調にならぬのだ。
飛ぶ山羊と
動かぬ羊駝
風は同じ