【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―ボンネットに猫いる 編―

2026年5月2日

吾輩は猫である ―ボンネットに猫いる 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

冷えた朝、
車は静かに並ぶ。
だがその中に、
わずかな温もりがある。

ボンネットの上、
あるいはその内側。
猫は、
暖を知っている。

人間は、
急ぐ。
鍵を押し、
そのまま動かそうとする。

だが、
ほんの一瞬、
立ち止まるだけで、
変わる未来がある。

「いるかもしれない」

その想像が、
行動を変える。

軽く叩く。
周りを覗く。
そして、
ボンネットをあける。

見えぬ場所に、
命は潜む。

確認することは、
手間ではない。
責任である。

吾輩は思う。
優しさとは、
見えているものではなく、
見えていないものへ向く力だと。

猫は、
そこにいるかもしれぬ。
いないかもしれぬ。
だが、
確かめることに、
損はない。

ほんの一手が、
守る。

吾輩は猫である。
そこにいることもある。
だからこそ願う。
気づいてほしいと。
叩いてほしい。
そして、
あけてほしいと。


一手間で
見えぬ命を
守りけり


  • この記事を書いた人

gonta

-【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編