【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―猫桃太郎編―

2026年3月10日

吾輩は猫である ―猫桃太郎編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

川上から、
大きな桃が流れてきた。
人間は驚き、
切ろうとする。

待て。
それは、
中から出る話だ。

人間の物語では、
桃から桃太郎が出るらしい。
鬼を退治し、
宝を持ち帰る。

だが、
もし桃から出たのが、
吾輩だったらどうする。

きびだんごを配るだろうか。
犬と猿と雉を従えるだろうか。
鬼ヶ島へ向かうだろうか。

否。

猫は、
徒党を組まぬ。
必要なら協力するが、
無理に仲間を増やさぬ。

鬼とは、
外にいるとは限らぬ。
欲、慢心、
過信。
それらは、
内側にも住む。

退治すべきは、
遠い島より、
近い油断である。

宝を持ち帰るより、
無事に帰ること。
勝つよりも、
続けること。

吾輩は、
桃から出ても、
まず昼寝をする。
焦らぬ。
鬼は、
急いだ者から狙う。

吾輩は猫である。
英雄にはならぬ。
だが、
鬼を増やさぬ生き方は知っている。
物語とは、
強さよりも、
賢さの話である。


鬼よりも
己の慢心
先に斬る


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gonta

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