【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―囲碁 編―

2026年3月18日

吾輩は猫である ―囲碁 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

机の上に、
碁盤が置かれる。
黒と白の石が、
静かに並ぶ。

音は、
「コツ」と一つ。
それだけで、
空気が変わる。

人間はこれを、
囲碁と呼ぶ。

将棋のように、
駒は動かぬ。
取り合いはあるが、
戦いというより
陣取りである。

吾輩は、
盤の横に座る。
黒石は夜の色、
白石は昼の色。
どちらも、
丸い。

丸いものは、
転がしたくなる。
だが、
今日は触らぬ。
人間が妙に真剣だからだ。

囲碁とは、
奪う遊びではない。
広げる遊びだ。

相手を消すより、
自分の地を整える。
急がず、
焦らず、
盤はゆっくり埋まっていく。

一手の価値は、
すぐにはわからぬ。
十手先、
百手先で
意味を持つ。

猫の歩き方も、
少し似ている。
急ぐと、
大事な場所を見落とす。

終局すると、
盤には
黒と白の世界が残る。
争いの跡というより、
一つの風景だ。

吾輩は猫である。
石は打たぬ。
だが、
盤を広く見ることは知っている。
囲碁とは、
急がず世界を作る技である。


黒白の
間に広がる
静かな地


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gonta

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