【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―ミュージカル 編―

2026年4月26日

吾輩は猫である ―ミュージカル 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

静かな会話の途中で、
急に歌が始まる。
感情が高まり、
言葉だけでは足りなくなると、
人は声を伸ばす。

人間はこれを、
ミュージカルと呼ぶ。

不思議な形式だ。
現実では、
突然歌い出す者はいない。
だが、
舞台では自然に見える。

なぜか。

感情が、
論理を越えるからだ。
説明するより、
響かせる方が早い時がある。

吾輩は思う。
伝えるとは、
言葉だけではないと。

声の強さ、
間の取り方、
身体の動き。
それらすべてが、
意味を持つ。

人間は、
正しさを語る。
だが、
届かなければ、
存在しないのと同じだ。

ミュージカルは、
過剰である。
だがその過剰が、
心に残る。

控えめなだけでは、
伝わらぬものもある。

吾輩は、
舞台の端に座る。
動かず、
ただ見ている。
それでも、
場の流れは感じ取れる。

吾輩は猫である。
歌は歌わぬ。
だが、
伝わる瞬間は知っている。
表現とは、
理解させることではなく、
感じさせることなのだ。


語るより
響かせたとき
届きけり


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gonta

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