吾輩は猫である。
名前はまだない。
朝から、
空気が重い。
陽が昇ったばかりだというのに、
地面はすでに熱を持ち、
窓辺にも逃げ場がない。
人間はこれを、
酷暑日と呼ぶ。
暑いという言葉だけでは、
足りないらしい。
少し歩くだけで、
汗が流れる。
車の中は、
あっという間に熱くなる。
道路も、
屋根も、
室外機の風も、
街全体を温めていく。
吾輩は思う。
こういう日は、
我慢してはならぬ。
猫は、
暑ければ動かない。
涼しい床を探し、
日陰へ移り、
水を飲み、
体力を使わぬ。
それは、
怠けではない。
命を守るための、
正しい判断である。
人間は、
暑くても働こうとする。
予定がある。
約束がある。
少しくらいなら大丈夫だと、
外へ出ようとする。
だが、
酷暑に根性は通じぬ。
冷房を使う。
水分と塩分を取る。
無理な外出を避ける。
子供や高齢者、
動物の様子を、
いつもより注意して見る。
それだけで、
守れる命がある。
特に猫は、
不調を言葉にできぬ。
食欲がない。
呼吸が速い。
いつもより動かない。
小さな変化を、
見逃してはならない。
吾輩は猫である。
暑さと戦うつもりはない。
勝てぬ相手とは、
距離を取る。
酷暑日とは、
無理に頑張る日ではなく、
命を最優先にして、
予定や行動を変える日なのだ。
暑き日は
予定を捨てて
命取る