吾輩は猫である。
名前はまだない。
丸いものが、
転がる。
それだけで、
空気が変わる。
人間はこれを、
サッカーと呼ぶ。
蹴る。
追う。
奪う。
そして、
また転がる。
猫にとって、
球は目的ではない。
動くこと自体が、
意味である。
吾輩は、
一歩踏み出す。
速さはある。
だが、
方向は読まぬ。
転がるものに、
正解はない。
人間は、
戦術を組む。
配置を決め、
役割を与える。
だが、
猫は違う。
全員が、
ボールを見る。
全員が、
同時に動く。
そして、
時にぶつかる。
それでも、
成立する。
吾輩は思う。
秩序とは、
必ずしも整列ではないと。
混沌の中にも、
流れはある。
誰かが触り、
誰かが止め、
また次へつながる。
やがて、
一瞬の隙に、
球はゴールへ向かう。
それで、
よい。
吾輩は猫である。
戦術は持たぬ。
だが、
転がる流れは知っている。
サッカーとは、
制御と自由が
交差する遊びなのだ。
球ひとつ
追えば世界が
動き出す