吾輩は猫である。
名前はまだない。
暑い。
それしか、
言葉が出ぬ。
朝から床に伸び、
昼には動かず、
夜になって、
ようやく少し元気になる。
人間はこれを、
「へたってるね」と言う。
その通りである。
猫は、
無駄な体力を使わぬ。
暑ければ、
寝る。
涼しい場所へ移る。
水を飲む。
それが、
夏を生き抜く知恵である。
吾輩は思う。
頑張ることは、
いつでも正しいわけではない。
暑い日に、
無理をする。
眠いのに、
休まない。
疲れているのに、
「まだ大丈夫」と言う。
それは、
賢さではない。
猫は、
自然には逆らわぬ。
暑さには、
暑さの過ごし方がある。
だから、
秋になれば、
また元気に走り回れる。
人間は、
一年中同じように働こうとする。
だが、
季節には季節のリズムがある。
夏は、
少し力を抜いてよい。
休むことも、
立派な仕事である。
吾輩は猫である。
今日は少し、
へたっている。
だが、
それでよい。
夏とは、
頑張る季節ではなく、
無事に乗り切る季節なのだから。
へたりつつ
秋への力を
蓄えり