【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―黒歴史 編―

2026年9月15日

吾輩は猫である ―黒歴史 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

人間には、
思い出したくない過去があるらしい。

昔の写真。

昔の文章。

昔の発言。

昔の服装。

できることなら、
全部まとめて箱に入れ、
押し入れの奥へしまいたい。

人間はこれを、
黒歴史と呼ぶ。

吾輩は思う。

ずいぶん大げさである。

その時は、
それなりに真剣だったのではないか。

本人は格好いいと思っていた。

正しいと思っていた。

良かれと思っていた。

ただ、
今の自分から見ると、
少々つらい。

それだけである。

猫にも、
似たような過去はある。

飛べると思って、
少し高すぎる棚へ挑んだ。

失敗した。

何事もなかった顔で、
毛づくろいをした。

人間が見ていたことだけが、
誤算であった。

だが、
猫は引きずらぬ。

昨日転んでも、
今日また跳ぶ。

人間は、
昔の自分に厳しい。

「あんなことを言っていた。」

「あんなものを書いていた。」

「なぜ止めてくれる者がいなかったのか。」

だが、
吾輩は思う。

黒歴史があるということは、
今の自分が、
昔とは少し変わったということでもある。

何も変わっていなければ、
恥ずかしいとも思わぬ。

未熟だった。

思い込みもあった。

格好もつけた。

失敗もした。

その全部を通って、
今がある。

ならば、
完全に消してしまうのも、
少し惜しい。

時々開いて、

「若かったな。」

と笑えるくらいでよい。

ただし、
同じ黒歴史をもう一度作る必要はない。

学ばぬ者の黒歴史は、
歴史ではなく、
連載になる。

吾輩は猫である。
失敗した姿を写真に残されても、
削除依頼は出さぬ。

黒歴史とは、
消すべき過去ではない。

昔の自分から、
今の自分まで、
ちゃんと歩いてきた証なのだ。


黒歴史
笑えた時が
成長期

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gonta

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