吾輩は猫である。
名前はまだない。
人間は、
体に小さなできものができると、
しばらく様子を見る。
そのうち治る。
痛くないから大丈夫。
そう思っているうちに、
なかなか消えない。
人間はこれを、
イボと呼ぶ。
そして、
病院へ行くと、
今度はとても冷たいものが出てくる。
人間はこれを、
液体窒素と呼ぶ。
吾輩は思う。
冷たいもので、
なぜ退治できるのか。
聞けば、
ものすごく低い温度で患部を凍らせ、
少しずつ処置していくらしい。
なるほど。
熱して倒すのではない。
凍らせるのである。
人間の医療は、
なかなか容赦がない。
処置を受けた人間は言う。
「痛い。」
だが、
少し経つとまた言う。
「まあ、我慢できる。」
そして、
次の診察でもまた冷やされる。
吾輩は思う。
一度で終わらぬこともあるらしい。
何度か繰り返し、
少しずつ小さくしていく。
なかなか地道である。
人間は、
すぐ結果を求める。
一回で治したい。
すぐ消したい。
だが、
体は機械ではない。
少しずつ反応し、
少しずつ戻っていく。
猫も、
傷ができれば、
一晩で元通りにはならぬ。
舐めすぎず、
休み、
少しずつ治す。
大切なのは、
途中で放り出さないことなのだろう。
吾輩は思う。
イボのような小さなものほど、
後回しにされやすい。
だが、
気になるなら早めに診てもらう。
必要なら、
きちんと処置する。
そして、
治るまで付き合う。
それが、
結局いちばん近道なのかもしれぬ。
吾輩は猫である。
液体窒素は遠慮したい。
ただでさえ、
冷たい診察台は苦手である。
だが、
小さな違和感を放っておかず、
少し痛くても早めに整えることの大切さは知っている。
液体窒素によるイボ退治とは、
一瞬で消す魔法ではない。
小さな不調に、
少しずつ向き合っていく、
なかなか根気のいる治療なのだ。
冷たくて
痛いが未来は
つるり肌