吾輩は猫である。名はまだない。 雪が降り積もる山あいの村。白銀の世界を歩く吾輩の前に、小さな影がぴょんと跳ねた。 それは――おこじょ。白い毛並みに黒い尻尾、雪の中をすばしこく走る小さな生き物である。 「寒くないのか?」と吾輩が声をかけると、おこじょは振り向いてにやりと笑った。「雪の中こそ、わたしの道。足跡が風になるんだ」その言葉に、吾輩は舌を巻いた。人も猫も寒さを避けて家にこもるが、おこじょは冬を生きる達人なのだ。 夜になると、山は静まり返る。吾輩は屋根の上で星を眺め、おこじょは雪穴の中で丸くなる。それぞ ...