吾輩は猫である。名はまだない。 朝から、飼い主の様子が少し違った。キャリーが出され、いつもより声がやさしい。――これは、病院に行く日である。 今日は「抗体検査」というものを受けるらしい。どうやら、体の中に見えない盾がきちんと備わっているかを調べるのだという。吾輩にはよく分からぬが、飼い主の顔は真剣だった。 診察台の上は、相変わらずひんやりしている。獣医殿は落ち着いた声で言った。「少しだけ採血しますね。すぐ終わりますよ。」吾輩は耳を伏せ、ぐっと耐えた。誇りは傷つかぬ。ほんの一瞬のことだ。 待合室で結果を待つ ...