【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―油と猫 編―

2026年3月28日

吾輩は猫である ―油と猫 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

台所に、
独特の匂いが立つ。
静かだった空気が、
急に動き出す。

人間は、
鍋に油を引く。

熱されると、
油は変わる。
透明から、
きらめきへ。
やがて、
音を伴う。

吾輩は、
少し距離を取る。
油は、
近づきすぎてはならぬものだ。

跳ねる。
予測なく、
一瞬で。

世の中にも、
似たものがある。
便利で、
役に立ち、
だが扱いを誤れば、
傷になる。

人間は、
火加減を見て、
油の状態を読む。
早すぎず、
遅すぎず。

適切とは、
経験でしか測れぬ。

香りは良い。
食欲を誘い、
場を温める。
だが、
猫は知っている。

良い匂いほど、
距離が大事だ。

やがて、
火は弱まり、
音も静かになる。
油は、
また落ち着く。

吾輩は猫である。
油は舐めぬ。
だが、
扱いの難しさは知っている。
世の中とは、
役に立つものほど、
慎重に向き合うものなのだ。


良き匂い
近づきすぎて
跳ね返る


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gonta

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