【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―猫にやさしい暖房 編―

2025年12月17日

吾輩は猫である ―猫にやさしい暖房 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

冬が深まり、部屋の空気がひんやりしてきた。
吾輩は飼い主の足元にまとわりつき、
「そろそろ暖房を……」と無言の圧をかける。

飼い主は苦笑しつつスイッチを入れた。
まず稼働したのはエアコン。
あたたかい風が天井からそっと降りてきて、
吾輩の背中を柔らかく包んだ。
「これなら乾燥もしすぎないように加湿するからね」と、飼い主。
ふむ、気が利いておる。

次に使われたのは、床暖房だ。
これがまた極上のぬくもりで、
床に身体が吸い付くように沈んでいく。
まるで地面そのものが抱きしめてくれるようだ。
吾輩が伸びたまま動かなくなるのも無理はない。

しかし飼い主は言った。
「ストーブは、危ないからね。
 君が乗ろうとするから……」
吾輩は耳を伏せた。
たしかに、赤く光る前面はどうにも座り心地が良さそうに見えるのだ。
危険ゆえに封印された暖房、それもまた人生である。

そして、飼い主は膝掛けを広げた。
そこには人間用と吾輩用、
ふたつの“ぬくもりスペース”が用意されていた。
吾輩は迷わず膝掛けの隙間に頭をすべり込ませた。

暖房器具は便利だが、
結局いちばんあたたかいのは
飼い主の膝と、そのそばにある静けさなのだ。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、この冬、はっきり分かった。
“やさしい暖房”とは、
部屋だけでなく心もあたためてくれるものを言うのだ。

暖とともに 寄り添う影や 冬の猫えること。


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gonta

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