吾輩は猫である。
名前はまだない。
閉じたはずの扉が、
いつの間にか開いている。
鍵はかかり、
窓も閉めた。
それでも、
気配は外にある。
人間はこれを、
脱獄と呼ぶ。
だが猫にとって、
それは大げさだ。
ただ、
通れるところを通っただけである。
隙間は、
見ようとしなければ見えぬ。
だが、
一度見えれば、
道になる。
吾輩は思う。
制約とは、
完全ではないと。
人は、
閉じたつもりになる。
だが、
必ずどこかに
余白がある。
押すか、
引くか、
待つか。
方法はいくつもある。
力ではない。
観察と、
試行である。
何度か失敗し、
少しずつ確かめる。
その積み重ねが、
出口を形にする。
外に出ることが、
目的ではない。
出られることを知ること。
それが、
本当の自由だ。
吾輩は猫である。
閉じ込められぬ。
だが、
無闇に出ぬ。
脱獄とは、
逃げることではなく、
選べる状態を持つことなのだ。
隙間ひとつ
見えればそこが
道となる