吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― 猫ハーネス 編―

2025年11月19日

吾輩は猫である ― 猫ハーネス 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

ある日、飼い主が新しい首輪を持ってきた。
と思いきや、それは胴に巻きつく奇妙な布の帯――
「ハーネス」というらしい。

「これでお散歩しようね」と飼い主は笑う。
ふむ、吾輩を束ねて連れ出すとは、なかなか大胆な宣言である。
しかし、興味が勝った。
窓の向こうの世界を、
ずっと眺めるだけでは飽き足らなかったのだ。

カチリ。金具の音とともに扉が開く。
外の空気が胸に飛び込んできた。
土の匂い、風の音、鳥の声――
それはすべて新鮮で、
少しだけ怖くて、でも確かに生きていた。

吾輩は一歩、また一歩と進む。
飼い主の手がリードを握りしめ、
その震えが伝わってくる。
互いに緊張しているのだ。
けれど、その緊張の糸こそ、
信頼という名の絆なのだろう。

しばらく歩くと、吾輩は立ち止まり、空を見上げた。
青く広がる世界は、窓越しよりもずっとまぶしい。
「帰ろっか」と飼い主が言う。
吾輩は小さく鳴いて、うなずいた。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、あのハーネスの重みの中に、
自由と愛は共に結ばれていた。

束ねても 心は風に 遊びけり


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gonta

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