【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―猫雛壇編―

2026年3月3日

吾輩は猫である ―猫雛壇編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

部屋の一角が、
急に高くなる。
赤い布が敷かれ、
段が重なり、
人形が整然と並ぶ。

人間はこれを、
雛壇と呼ぶ。

触れるな、
近づくな、
倒すな。
注意の声が、
いつもより多い。

吾輩は思う。
段差とは、
上るためにあるのではないかと。

だが、
今日は違うらしい。
上るより、
眺める日。

内裏雛は最上段。
その下に、
三人官女、
五人囃子。
役割があり、
順番がある。

整っていることが、
美しいとされる日だ。

吾輩は、
段の前に座る。
飛び乗らぬ。
今日は、
眺める側でいる。

飾りとは、
未来への願い。
健やかに、
穏やかに、
無事に育つように。

人形は動かぬが、
願いは動く。

やがて、
数日が過ぎ、
段は解かれ、
布は畳まれる。
残るのは、
春の気配だけだ。

吾輩は猫である。
雛壇には上らぬ。
だが、
整えられた願いの重みは知っている。
段とは、
願いを一段ずつ重ねた形なのだ。


段の上
動かぬ願い
春兆す


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gonta

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