吾輩は猫である。名はまだない。
暑さにはめっぽう弱い。
だが、よりによって“北海道”で熱中症になりかけるとは、
誰が想像しただろうか。
「北海道が40度です」
テレビから流れたその言葉に、
飼い主は氷を落とした。
エアコンのない実家に帰省していた人々は、
急遽ホテルに避難する騒ぎだ。
北の大地 避暑地どころか 灼熱地
札幌の猫友からLINEが届いた。
「こっちは溶ける、畳が灼けてる、
もう“涼しい顔してラーメン”なんて無理ニャ」
本州から移住した猫たちが語る。
「涼しさにひかれて越してきたのに、これでは詐欺だ」と。
農家の猫は深刻だった。
「じゃがいもが焼ける。
インゲンが焦げる。
土の中がサウナだ」と。
飼い主が「地球温暖化って本当だったんだな…」とつぶやく。
いや、それは前から分かってたろう。
ただ、“うちには関係ない”と思ってたんだ。
吾輩は涼を求めて風呂場へ移動する。
タイルの冷たさが、今日の唯一の救い。
氷水を入れた洗面器を見つめながら、
こう思う。
「冷房が“贅沢品”だった時代の終焉ニャ」
地球の変化は、
空からでもなく、海からでもなく、
足裏からジリジリ伝わってくる。
北の大地が焼けるとき、
猫はただ、涼しい日の夢を見るしかないのか――。