吾輩は猫である。
名前はまだない。
空気が、
少し重い。
誰も触れていないのに、
部屋の中央に、
見えぬ何かが置かれている。
人間はそれを、
重圧と呼ぶ。
期待という名で届き、
責任という形で積まれ、
沈黙のまま膨らむ。
音はないが、
確かに重い。
吾輩は、
机の上に乗ってみる。
書類は重いが、
それは紙の重さではない。
決めねばならぬ未来が、
重いのだ。
人は、
強くなろうとする。
だが、
重圧は力では動かぬ。
抱えれば抱えるほど、
足元が揺らぐ。
猫は知っている。
重いものは、
真下から受け止める。
横から押せば、
倒れる。
深く座り、
呼吸を整え、
一つずつ、
重さを分ける。
全部を背負わぬ。
今日の分だけ、
引き受ける。
夜が来ると、
重圧は少し薄まる。
消えたわけではない。
ただ、
静けさに溶ける。
吾輩は猫である。
重圧は感じる。
だが、
潰れはしない。
重さとは、
逃げぬ者にだけ、
形を変えるものだからだ。
重さ知り
座る姿勢に
芯が立つ