吾輩は猫である。
名前はまだない。
朝が、
いつもより澄んでいる。
空は高く、
風は冷たい。
人間はこの日を、
建国記念の日と呼ぶ。
国の始まりを、
思い出す日らしい。
だが、
始まりとは、
一度きりの出来事ではない。
人が集まり、
暮らし、
守り、
変え、
また守る。
その繰り返しの上に、
今日がある。
旗が揺れる。
色は変わらぬが、
見る人は変わる。
歴史は、
書き足されながら続いていく。
吾輩は思う。
建てるとは、
壊さぬことではなく、
手入れを続けることだと。
家も、
庭も、
社会も、
放っておけば荒れる。
静かな維持こそ、
最も地味で、
最も大きな営みである。
祝うことは、
騒ぐことではない。
立ち止まり、
今ある場所を確かめることだ。
吾輩は猫である。
国を語らぬ。
だが、
続いてきたものの重みは知っている。
建国とは、
今日も壊さず、
明日へ渡すことなのだ。
旗揺れて
続く手入れに
春近し