吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― 恋する警護 編―

2025年10月30日

吾輩は猫である ― 恋する警護 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

このところ、飼い主に新しい仕事ができたらしい。
「警護の仕事」と言っていた。
誰かを守るために、夜も外を歩く。
その姿は、いつもより少し頼もしく見えた。

帰りが遅くなる夜、
吾輩は玄関の前で耳を澄ませる。
鍵の音が聞こえるまで、
ただ静かに、息をひそめて待つ。
守るというのは、
たぶん待つことでもあるのだろう。

飼い主のスマホから聞こえる声――
それは、守る相手の女性のものだった。
「いつもありがとう」
その言葉に、飼い主の顔が少し赤くなった。
吾輩は気づかぬふりをしたが、
胸の奥が少しだけチクンとした。

恋と警護。
どちらも相手を想い、
そっと距離を保つもの。
強く抱きしめられなくても、
その人が無事でいるだけで満たされる。

飼い主が帰宅し、
吾輩の頭を撫でながら言った。
「お前も、留守番ごくろうさん」
吾輩はにゃあと鳴いた。
守る者を、今度は吾輩が守っているのだ。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、心の奥に確かに芽生えた想いがある。
それは――恋という名の、やさしい警護。

恋と守 どちらも同じ まなざしで


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gonta

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