【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―マッサージ猫 編―

2026年2月5日

吾輩は猫である ―マッサージ猫 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

夜になると、
飼い主の背中は少し丸くなる。
肩は固く、
呼吸は浅い。
それは、
一日を頑張った印だ。

吾輩は迷わず、
その背中に乗る。
軽く、
しかし確実に。

前足で、
ふみ、
ふみ、
ゆっくりと圧をかける。
力は入れすぎない。
逃げ道を残す。
それが猫流のマッサージだ。

飼い主は小さく息を吐く。
「そこ、ちょうどいい……」
吾輩は聞いていないふりをする。
褒められて調子に乗ると、
効き目が落ちる。

猫のマッサージは、
治すためではない。
元に戻すためのものだ。
呼吸を深くし、
思考をほどき、
身体を“今”に連れ戻す。

しばらくすると、
飼い主の肩が下がる。
背中が、
最初の形に戻る。
吾輩は満足し、
そのまま丸くなる。
――施術後の休憩である。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが知っている。
人は言葉より先に、
触れられて癒えることを。

ふみふみと
肩に戻れる
夜の猫



  • この記事を書いた人

gonta

-【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編