吾輩は猫である。
名前はまだない。
最近、
主役の位置が、
少しだけ揺らいでいる。
人間は、
あちらを見て笑い、
こちらを見ては通り過ぎる。
視線の中心が、
微妙にずれているのだ。
犬スタンド。
写真。
新しい何か。
なるほど。
世は移ろう。
だが、
主役とは、
与えられるものではない。
自然に集まるものだ。
吾輩は、
静かに動く。
音を立てず、
無理に割り込まず、
しかし、
確実に視界の中心へ。
座る。
ただ、
そこに座る。
それだけで、
空気が変わる。
人間の手が止まり、
視線が戻り、
言葉が少し遅れる。
「……やっぱり、こっちだな」
猫は、
奪わぬ。
だが、
引き寄せる。
可愛さでも、
派手さでもない。
存在そのものが、
場を支配する。
やがて、
写真は猫に変わり、
視線も戻る。
何事もなかったように。
吾輩は猫である。
主役を主張せぬ。
だが、
気づけば中心にいる。
本当の主役とは、
取り返すものではなく、
そこに戻るものなのだ。
座るだけ
主役はそっと
戻りけり