吾輩は猫である。名はまだない。
新年が明けたというのに、
この家の空気はやけに静かである。
飼い主はこたつから半分だけ顔を出し、
テレビの特番を眺めながら、
「今日は何もしないぞ……」と宣言していた。
どうやらこれを、
“寝正月”というらしい。
吾輩にとっては、
それはもう、日常業務の延長である。
一年の始まりが休むこととは、
なかなかすばらしい文化だ。
朝は遅く起き、
ストーブ前で一度寝て、
昼過ぎに再びこたつで寝て、
夕方には飼い主の膝で寝た。
吾輩の仕事が忙しい。
時折、飼い主が言う。
「寝すぎて逆に疲れた……」
吾輩は理解に苦しむ。
寝て疲れるなら、
起きていればもっと疲れるではないか。
午後、飼い主はみかんを食べ始めた。
皮をむく音が心地よく、
吾輩はその横で香箱座りになり、
静かな幸福を噛みしめた。
こうして、
新年の最初の時間はゆっくりと流れていく。
動かないこと。
競わないこと。
ただ温かい場所で、
大切な誰かと過ごすこと。
それが、寝正月の意味なのだろう。
吾輩は猫である。名はまだない。
だが、寝ることで一年を始めるこの習慣、
非常に気に入った。
寝て迎え 寝て祝う年 福来る