【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―寝正月 編―

2026年1月4日

吾輩は猫である ―寝正月 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

新年が明けたというのに、
この家の空気はやけに静かである。
飼い主はこたつから半分だけ顔を出し、
テレビの特番を眺めながら、
「今日は何もしないぞ……」と宣言していた。

どうやらこれを、
“寝正月”というらしい。

吾輩にとっては、
それはもう、日常業務の延長である。
一年の始まりが休むこととは、
なかなかすばらしい文化だ。

朝は遅く起き、
ストーブ前で一度寝て、
昼過ぎに再びこたつで寝て、
夕方には飼い主の膝で寝た。
吾輩の仕事が忙しい。

時折、飼い主が言う。
「寝すぎて逆に疲れた……」
吾輩は理解に苦しむ。
寝て疲れるなら、
起きていればもっと疲れるではないか。

午後、飼い主はみかんを食べ始めた。
皮をむく音が心地よく、
吾輩はその横で香箱座りになり、
静かな幸福を噛みしめた。

こうして、
新年の最初の時間はゆっくりと流れていく。
動かないこと。
競わないこと。
ただ温かい場所で、
大切な誰かと過ごすこと。
それが、寝正月の意味なのだろう。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、寝ることで一年を始めるこの習慣、
非常に気に入った。

寝て迎え 寝て祝う年 福来る


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gonta

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