【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ― そうじゃのう 編―

2025年10月28日

吾輩は猫である ― そうじゃのう 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

朝のニュースで、飼い主が小さくつぶやいた。
「村山富市さん、101歳で亡くなられたんだって。」
テレビの画面には、
柔らかな笑みを浮かべる老人の姿が映っていた。

「そうじゃのう」
ゆっくりと、しかし確かな重みをもって語るその声を、
吾輩もどこかで聞いたことがある。
災害に寄り添い、戦争を語り継ぎ、
人の痛みに耳を傾けた人だった。

政治の言葉は難しい。
だが、村山という人の言葉には、
理屈よりも“人の温度”があった。
時に批判されても、
自らの信じる道を曲げなかったその背中は、
どこか、陽だまりで眠る猫のように静かで強かった。

吾輩は考えた。
「力」とは怒鳴ることではなく、
「優しさ」を貫く勇気なのかもしれぬ。

外では秋風が吹き、金木犀が香る。
季節がまたひとつ巡っていくように、
人の生もまた、
時の流れの中で記憶として残っていく。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、あの穏やかな声が、
いつまでもこの国の風に混じって響きますように。

風やさし 声は今なお 秋の空


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gonta

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