【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ― ステマ 編―

2025年10月8日

吾輩は猫である ― ステマ 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

近ごろ、人間の世界では「ステマ」なる言葉が飛び交っている。
どうやら宣伝を宣伝と告げずに広めることを指すらしい。
SNSに「これ最高!」と写真を載せれば、
本心か商売かはわからぬ。
人は疑い、時に炎上する。

猫の世界にも似たことはある。
路地裏で一匹が「この魚屋は最高だにゃ」と言えば、
仲間はぞろぞろ集まる。
だが実は、その猫だけが魚屋に可愛がられて特別にもらっていたら――
他の者は裏切られた気分になるだろう。

宣伝とは嘘ではない。
けれど隠された意図は、
人の心を冷たくする。
正直に「これは宣伝だ」と言えば、
むしろ受け入れられることもあるのに。

吾輩はただ窓辺で毛づくろいをしながら、
人間たちの騒動を眺める。
猫にとっては、
美味しいものは美味しいと鳴き、
嫌なものはしっぽで払うだけ。
そこに余計な演出はいらぬ。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、人も猫も誠実であるほど、
暮らしは心地よくなるのではなかろうか。

うそ隠し 尾を振るよりも 陽に眠れ


  • この記事を書いた人

gonta

-【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編