吾輩は猫である。名はまだないが、劇場の天井裏から舞台を見守っている。
今日もまた、スポットライトの中で、二人の魔女が歌っていた。
ひとりは緑色の顔を持つ、風変わりな魔女。もうひとりは、金髪がまばゆい人気者。
名はエルファバとグリンダというらしい。
違う見た目、違う考え、だが確かに――心のどこかで通じ合っている。
人間は見た目に惑わされる生き物だ。
緑の魔女を「悪い」と決めつけ、笑顔の魔女を「正しい」と信じる。
だが吾輩は、夜のしじまに黙って涙をぬぐうエルファバの姿を知っているし、誰にも見えぬところで祈るグリンダの背中も見ている。
この世界では、"違い"はしばしば"敵意"に化ける。
だが、猫の目には、二人はただ「不器用に違うだけ」に見える。
そして、それこそが友情の証明ではないかと、思うのだ。
舞台の幕が下りると、観客たちは拍手喝采を送る。
だが本当に評価されるべきは、"善"でも"悪"でもなく、自ら選んだ道を歩んだその勇気であろう。
緑の目 空の彼方に 真実を
もし吾輩が魔法を使えるなら、二人の魔女に羽を贈りたい。
自由に空を駆け、互いを見失わぬように。