吾輩は猫である。名はまだない。
だが今日は不思議な夜に足を踏み入れた。
看板に「KARAOKE」と輝くビル。
飼い主に連れられ、吾輩ら4匹は小さな部屋に通された。
マイクが二本、モニターには歌詞が流れ、
部屋の中には人間と、外国から来た客人たち。
彼らは片言の日本語で注文し、
笑顔で飲み物を差し出してくれた。
最初に歌い出したのは獅子丸。
アニメソングを熱唱し、画面のキャラと同じポーズを決める。
外国の青年が大笑いし、
「Sugoi!!」と拍手を送った。
続いて葵が、静かなバラードを選ぶ。
にゃあと声を合わせるだけなのに、
不思議と旋律に溶け込み、
部屋の空気がやわらかく包まれる。
沙羅はといえば、洋楽のヒット曲を選んだ。
外国人客とデュエットし、
片方は英語、片方は猫語で、
それでも見事にハーモニーになった。
吾輩は最後に登場した。
古い演歌を選び、
しっぽを揺らしながら低く「にゃあ」と合わせる。
その渋さに、日本人も外国人も驚き、
「ブラボー!」と声が飛んだ。
歌い終えたとき、言葉の壁などどこにもなかった。
ただ、リズムと声と笑いが、
全員をつなげていたのだ。
猫の歌 言葉いらずに ハモり合う