吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― インターン 編 ―

2025年9月16日

吾輩は猫である ― インターン 編 ―

吾輩は猫である。名はまだない。

今朝はいつもの昼寝場所ではなく、
飼い主に連れられてオフィスなる場所に来た。
どうやら「インターン」という制度で、
若者が社会を学ぶ日らしい。

スーツ姿の学生たちが緊張した顔で挨拶をしている。
「よろしくお願いします!」
声は張りつめ、まるで新しい縄張りに踏み込む猫のようだ。

吾輩は机の下から観察する。
メモを取る姿、パソコンを打つ指先、
笑顔を作ろうとするがぎこちない口元。
それでも必死に前へ進もうとする様子に、
ひげがぴくりと動いた。

人間にとってインターンは試しの場らしい。
だが吾輩から見れば、
新しい匂いや音に慣れるまで身を潜める――
それは子猫が社会を学ぶ姿とそう変わらぬ。

昼休み、学生のひとりが弁当の唐揚げを落とした。
吾輩は素早く前足で押さえた。
「わっ、猫先輩に取られた!」
皆が笑い、場の空気が和んだ。
――どうやら吾輩は、緊張を解くインターンの助っ人になったらしい。

吾輩は猫である。名はまだない。
けれど今日、オフィスで学んだことはひとつ。
初めての場こそ、しっぽを高く、胸を張って歩くことだ。

新人も 猫も同じく 初舞台


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gonta

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