吾輩は猫である。名はまだない。
近ごろ人間たちは「ペット可マンション」なる住まいを好むらしい。
飼い主も吾輩を伴って見学に行き、
営業マンが胸を張って「ペット可です」と誇らしげに告げるのを聞いた。
だが実際のところ、事情はそう単純ではない。
規約には細かい文字が並び、
「体重10キロ以内」「共用部ではキャリー必須」など、
まるで吾輩が巨大怪獣であるかのように制限される。
確かに、吠える犬殿や羽ばたく鳥殿も住まうのだから、
互いに配慮が必要なのは理解している。
けれど吾輩としては、
廊下をしっぽ高く歩くくらいは許してほしいものである。
それでも、ペット可マンションの利点もある。
隣の住人が猫好きであれば、
エレベーターで会うたび「可愛いですね」と微笑んでくれる。
屋上のドッグランを横目に、
吾輩は日なたぼっこを満喫できる。
人と猫が共に暮らすには、
規則と寛容の両輪が必要なのだろう。
結局のところ、
「ペット可」とはただの物件条件ではなく、
人の心がどれだけ開かれているかの試金石に他ならぬ。
吾輩は猫である。名はまだない。
だが今日も規約を超えて、
窓辺の陽だまりで自由を謳歌する。
ペット可も 心しだいで 春の庭