吾輩は猫である。名はまだない。
ただし、毛並みには少し特徴がある。
耳と顔、しっぽと足先が濃い色を帯び、
体は淡く明るい。
人間はこれを「ポイントカラー」と呼ぶらしい。
どうやら吾輩の毛色は遺伝子によって決まっているのだとか。
体温の高い部分は色が薄く、
冷えやすい部分には色が濃く出る仕組みだそうな。
なるほど、鼻先や耳が濃いのはそのためか。
飼い主は「科学ってすごいね」と言う。
だが吾輩からすれば、
毛色などはただ生まれつき与えられた装いにすぎぬ。
大切なのは、
色がどう見えるかではなく、
その毛並みでどれだけ日向ぼっこが気持ちよいかということだ。
もっとも、街を歩けば人は吾輩を振り返る。
「シャムみたいだ」「エレガントだ」と声を上げる。
それもまた、遺伝子がくれたひとつの縁なのだろう。
吾輩は猫である。名はまだない。
だが、この毛色を誇りに思う。
科学の言葉で語られようとも、
吾輩にとってはただの“自分らしさ”だからだ。
毛の色も 遺伝子超えて 我が姿