吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― 猫呪術師 編―

2025年10月1日

吾輩は猫である ― 猫呪術師 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

だが、ただの猫ではない。
路地裏の闇に潜み、月の光を背に受け、
古き言葉を喉奥で転がせば、
毛並みに刻まれた呪は目覚める。

人は知らぬ。
吾輩のしっぽが一振りすれば、
雨雲は割れ、
鼠どもは夢の中で踊り出す。
ひげが震えれば、
人の悪しき心も和らぎ、
やがて眠りに落ちる。

この街の平穏は、
人の法律だけで守られているのではない。
猫呪術師たちが、
夜な夜な闇に結界を張り、
災いを追い払っているからなのだ。

もっとも、吾輩自身は大きな野望を持たぬ。
ただ飼い主の安眠と、
一皿のカリカリの無事を祈るばかり。
呪術とは、結局のところ――
愛するものを守る術に他ならぬのだ。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが今宵も月を仰ぎ、
しっぽを掲げて小さく呪を唱える。
世界が少しでも優しくありますように、と。

月明かり ひげ揺れ唱う 守りごと


スポンサーリンク

  • この記事を書いた人

gonta

-吾輩は猫である(現代編)