吾輩は猫である。名はまだない。
夕方のニュースで、飼い主がテレビに向かってつぶやいた。
「議員の数を減らすらしいよ」
吾輩は耳をぴくりと動かした。
――議員とは、人間の群れのリーダーのことか?
スタジオでは専門家が言う。
「無駄をなくし、効率的な政治を」
しかし、別の人は反論する。
「数を減らせば、多様な声が届かなくなる」
人間というのは、何かを減らしても増やしても、
必ず揉める生き物らしい。
猫の社会では、単純である。
多すぎれば喧嘩が増え、
少なすぎれば見張りが足りぬ。
だから、縄張りの大きさに合わせて自然に調整される。
これを「猫的バランス政治」と呼ぶ。
吾輩は思う。
大事なのは“数”よりも“質”であろう。
寝てばかりの議員より、
一匹でも本気で動く猫議員がいれば、
町はもっと平和になるはずだ。
ニュースが終わるころ、飼い主が言った。
「減らすより、ちゃんと働いてくれたらいいのにね」
吾輩は尻尾で同意を示した。
吾輩は猫である。名はまだない。
だが、国を動かす前に、
まずは自分の皿をきれいにするところから始めたい。
数よりも 誠で回る 世の仕組み