【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―瀬戸内レモン 編―

2026年4月3日

吾輩は猫である ―瀬戸内レモン 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

机の上に、
鮮やかな黄色が置かれた。
丸く、
光を含み、
どこか涼しげだ。

人間はこれを、
瀬戸内レモンと呼ぶ。

香りは爽やかで、
空気を軽くする。
だが、
一口かじれば、
顔が少し変わる。

酸い。

人間は、
それを好む。
甘さだけでは、
物足りぬらしい。

吾輩は思う。
酸味とは、
拒まれるためのものではないと。

味を締め、
輪郭を与え、
全体を整える。
甘さだけでは、
ぼやける。

人生も、
似ている。
楽なだけでは、
記憶に残らぬ。
少しの苦味、
少しの酸味が、
深さになる。

瀬戸内の風は、
穏やかだという。
強すぎぬ日差し、
やわらかな海。
だからこそ、
この味が育つ。

環境が、
味を決める。
急がず、
無理せず、
その土地のままに。

吾輩は猫である。
酸いものは好まぬ。
だが、
その意味は知っている。
爽やかさとは、
少しの厳しさの上に
成り立つものなのだ。


酸ひとつ
甘さ引き立て
風清し


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gonta

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