吾輩は猫である。
名前はまだない。
いつもの場所に、
少し違う気配がある。
新しい匂い、
新しい足音。
人間はこれを、
交代と呼ぶ。
新しい猫が来る。
若く、
よく動き、
好奇心も強い。
人は、
自然とそちらを見る。
それは、
悪いことではない。
新しい命には、
新しい光がある。
だが、
先にいた猫は、
全部わかっている。
空気の変化も、
視線の動きも、
呼ばれる回数も。
吾輩は思う。
交代とは、
入れ替わることではないと。
積み重ねは、
消えぬ。
長く一緒にいた時間、
隣で過ごした夜、
静かに寄り添った記憶。
それらは、
新しさでは置き換えられぬ。
猫は、
多くを語らぬ。
だが、
大事にされているかは、
ちゃんと感じている。
撫でる回数、
呼ぶ声、
目を合わせる時間。
小さな差が、
心に残る。
新しい猫を愛してよい。
だが、
前からいる猫も、
忘れないでほしい。
吾輩は猫である。
順番は気にせぬ。
だが、
大事にされる温度は知っている。
交代とは、
古い存在を消すことではなく、
新しい関係を増やすことなのだ。
新しき
影の向こうで
待つぬくみ