吾輩は猫である。
名前はまだない。
猫を好きな者同士は、
不思議と話が早い。
初対面でも、
写真を一枚見せれば、
会話が始まる。
「何歳ですか。」
「何匹いますか。」
「この子、よく食べますか。」
人間はこれを、
猫友と呼ぶ。
吾輩は思う。
友とは、
同じ趣味を持つ者だけではない。
同じものを、
大切に思える者なのだと。
猫の話をする。
病院の話をする。
餌の話をする。
時には、
看取りの話まで出る。
可愛いだけではない。
困ったことも、
心配なことも、
一緒に話せる。
だから、
少し安心する。
人間は、
自分の猫を褒められると、
妙に嬉しそうである。
「かわいいですね。」
その一言だけで、
まるで自分まで褒められたような顔をする。
吾輩には、
少し面白い。
だが、
分からなくもない。
大切な存在を、
誰かも大切に見てくれる。
それは、
嬉しいものなのだろう。
猫友には、
猫同士が会ったことのない場合もある。
それでも、
写真の中では、
ずいぶん顔なじみになる。
「最近どう?」
と聞かれると、
人間は吾輩の近況まで報告する。
どうやら吾輩は、
知らぬところで
交友関係を広げているらしい。
吾輩は猫である。
友達を増やすつもりはない。
だが、
吾輩をきっかけに、
人間同士の縁が増えるのなら、
それも悪くない。
猫友とは、
猫を通じて知り合った人ではない。
猫を大切にする気持ちを、
安心して分かち合える相手なのだ。
猫一匹
人の縁まで
つないでる