【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―鍵交換 編―

2026年9月16日

吾輩は猫である ―鍵交換 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

玄関で、
見慣れぬ音がする。

金属が外され、
新しいものが取り付けられる。

人間はこれを、
鍵交換と呼ぶ。

古い鍵でも、
昨日までは開いた。

壊れていない。

使えなくもない。

それでも、
交換することがある。

吾輩は思う。

安全とは、
壊れてから考えるものではないと。

誰かが鍵を持っているかもしれない。

長く使って、
仕組みが古くなっているかもしれない。

何も起きていない時ほど、
人間は後回しにする。

だが、
何か起きてからでは遅いこともある。

猫も同じである。

開いた窓。

少し緩んだ網戸。

閉めたつもりの扉。

そこに、
逃げ道ができる。

自由と呼べば聞こえはよい。

だが、
戻れなくなれば、
話は別だ。

だから、
確かめる。

閉まっているか。

壊れていないか。

昨日と同じだから大丈夫と、
思い込まない。

新しい鍵に変わると、
見た目はそれほど違わない。

だが、
人間は少し安心した顔をする。

吾輩は思う。

安心とは、
派手なものではない。

夜、
何事もなく眠れる。

出かけても、
家に戻れる。

猫が、
いつもの場所で丸くなっている。

その当たり前を、
静かに守るものなのだ。

吾輩は猫である。
鍵は持たぬ。

だが、
安心して眠れる縄張りの価値は知っている。

鍵交換とは、
古いものを捨てることではない。

これからも同じ日常を守るために、
入口をもう一度見直すことなのだ。


鍵替えて
変わらぬ夜を
守りけり

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gonta

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